研究課題/領域番号 |
22657002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石井 浩二郎 大阪大学, 生命機能研究科, 特任准教授 (40360276)
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キーワード | テロメア / セントロメア / 染色体 |
研究概要 |
今年度は染色体環状化の手法としてシェルタリン複合体の主要因子pot1の遺伝子欠損を用い、その株でのセントロメア破壊実験を行った。その結果、pot1遺伝子欠損株では極めて低頻度ではあるが新規セントロメア形成が一部見られることが判明した。そのセントロメア形成部位を確認したところ、環状化してしまった旧テロメア領域が変わらず形成部位となっていることが判明した。このことを受けて、次にpot1遺伝子欠損によって短縮し、環状化することで生育可能となった染色体融合部分のDNA配列を決定した。その結果、用いたpot1遺伝子欠損株では融合した旧テロメア領域にヘテロクロマチン形成を促すDNA配列が残存していることを確認した。従って、ヘテロクロマチン構造がセントロメア破壊を行った環状染色体の旧テロメア領域に残存し、それが低頻度の新規セントロメア形成を積極的に支えた可能性が考えられる。この結果より、次にヘテロクロマチン配列を完全に欠如した環状化染色体の作製を試みた。この実験ではpot1遺伝子欠損は用いず、部位特異的組換え酵素を使って直接的に染色体を任意の部位で環状化させることを試みた。加えてこの株では、残りの染色体は線状のままであり、セントロメア破壊を行う染色体のみが環状化される。もしもテロメアの存在がシスに新規セントロメア形成に寄与しているのであれば、この株でもtrt1遺伝子欠損株やpot1遺伝子欠損株と同様に新規セントロメア形成は大きく不能となることが予想されるが、もしもテロメアという存在がトランスに新規セントロメア形成を促しているのであれば、この株では線状染色体に正常なテロメアが残るため、新規セントロメア形成が見られることが期待された。しかしながら、この株では新規セントロメア形成は全く見られなかった。すなわち、テロメアの新規セントロメア形成への寄与はシスに働く効果であり、しかもそれはヘテロクロマチン構造に依存していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
trt1遺伝子欠損による染色体環状化株に続いてpot1遺伝子欠損による染色体環状化株、そして新たに任意の部位で染色体を環状化させた株でのセントロメア破壊実験が順次進められ、それぞれに新しい結果と解釈を生み出している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは分裂酵母そのものに遺伝子操作を加え、染色体構築を操りながらテロメアがセントロメアを創成する可能性を追究してきたが、その分子メカニズムは十分な理解には至っていないため、今後はそのアプローチに細胞生物学的な研究アプローチを組み合わせることを計画している。GFPによる染色体領域の可視化などを通じて、通常核膜周辺に複数がクラスターを形成して存在しているテロメア領域が、環状化染色体ではどのような位置取りとなり、それが新規セントロメア形成にどのような影響を与えるか、解析を加える予定である。
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