研究課題/領域番号 |
22657003
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
杉本 大樹 自治医科大学, 医学部, 助教 (70515866)
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キーワード | 超音波発声 / 交配行動 / コンソミック / 方言 |
研究概要 |
雄マウスは、交配行動時に雌マウスに対して超音波を発する。この超音波発声パターンは、遺伝的な影響を受け、マウス系統特異的な超音波発声を示すことが知られている。しかし、マウス交配行動時の超音波発声の役割や系統差の影響はまだよく分かっていない。本研究において、マウス超音波発声役割を明らかにするために、超音波再生実験によって超音波発声の系統差に対する雌マウスの選好性を調べた。まず、13マウス系統を用い交配行動時の超音波発声データを用い主成分分析によって超音波発声の特徴を明らかにした。その結果、第1成分は"鳴き時間と周波数の関係"、第2-4成分は、"超音波波形パターン"に関わる成分であると考えられた。さらに系統差をあらわす各成分の主成分得点と、雌マウスの雄に対する嫌がりの鳴き(クリック)との相関をもとに"クリックと正の相関を示す波形"と"クリックと負の相関を示す波形"の超音波ファイルをそれぞれ作成した。再生実験において、雌マウスは有意に"クリックと負の相関を示す波形"に引きつけられた。つまり雄マウスの超音波発声パターンの系統差が、雌マウスの雄マウスに対する選好性に関わることが明らかになった。この結果は、マウスにおいて音声コミュニケーションが交配選択に重要な役割を持ち得ることを示唆し、マウス社会行動における音声コミュニケーションの役割を理解する上で非常に重要であった。これらの遺伝的基盤をあきらかにするために、B6マウスの任意の一本の染色体を野生由来系統MSMに置換したコンソミック系統を用い、各コンソミックマウス系統のB6雌マウスに対する超音波発声を記録した。結果は、コンソミック系統ごとに特徴的な超音波発声パターンを示した。マウスの超音波発声は、一本の染色体の置換によって、大きくパターンを変えることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに野生由来マウス系統の超音波発声の特徴を明らかにした。加えて超音波再生実験によって、特定のオス超音波パターンが、メスマウスのオスの好みに影響し得ることを示した。これらの成果を論文として報告した(Sugimoto et al,2011)。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、特定のマウス超音波発声パターンがメスマウスのオスの好みに重要であることを示した。これらの超音波発声パターンに関わる遺伝的基盤を明らかにするために、B6マウスの任意の1本の染色体をMSMマウスに置換したコンソミックマウスを用いた順遺伝学的なスクリーニングを行う。各コンソミックマウス系統の交配行動時の超音波発声を記録する。平均周波数、平均時間、波形パターンの出現頻度等の比較を行い、各コンソミック系統の特徴を明らかにする。あるコンソミック系統が、C57BL/6と比較して異常な超音波特徴を示した場合、その原因は置き換えられたMSM由来の染色体であると同定できる。この手法により、超音波発声に重要な染色体を明らかにする。さらに明らかになった染色体の一部をMSM、のこりをC57BL/6でもつサブコンソミックマウスを作出し、交配行動時の超音波発声を記録し、超音波発声に関わる遺伝子座を明らかにする。
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