本研究は、新たな環境に定着した外来種が侵入・定着の過程でどのような急速な進化が生じたのかを明らかにするために、小笠原諸島に1960年代に侵入し、固有の生物に大きな影響を与えているグリーンアノール(Anolis carolinensis)を対象に、トカゲが侵入した小笠原父島、母島と原産地の北米の複数個体を次世代シークエンサーで全ゲノム配列を解読し、移入後50年間で進化した証拠をゲノム配列の中から探索することを目的としている。グリーンアノールは、すでにゲノム配列が既知であるので(1.7Gb)、短い断片を大量に読むことのできる次世代シークエンサーを使い、読まれた短い断片を既知の配列にアセンブルすることで、全ゲノムの配列を解読することが可能である。22年度は、小笠原諸島、父島、母島からの個体のサンプル入手、および移入元であるフロリダ集団からのサンプルを入手した。小笠原諸島の集団と、フロリダ集団の形態を比較すると、小笠原の集団で頭部のサイズが小さくなっている傾向にあった。採集した小笠原父島の8個体のゲノムを次世代シークエンサーSOLiDを用いて解析した。現在、得られた断片配列のデータを既知のグリーンアノールのゲノム配列にアセンブルし、SNP解析、ゲノム中の遺伝的変異量の解析を行っている段階である。今後、母島集団、フロリダ集団の個体の全ゲノムを解読し、全ゲノム配列を用いたコアレッセント解析により、ゲノム中に小笠原に移入後、自然選択によって頻度を増加させたと考えら得る領域を特定していく予定である。
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