本研究は、新たな環境に定着した外来種が侵入・定着の過程でどのような急速な進化が生じたのかを明らかにするために、小笠原諸島に侵入し、固有の生物に大きな影響を与えているグリーンアノール(Anolis carolinensis)を対象に、トカゲが侵入した小笠原父島、母島と原産地の北米の複数個体を次世代シークエンサーで全ゲノム配列を解読し、移入後50年間で進化した証拠をゲノム配列の中から探索することを目的としている。グリーンアノールは、すでにゲノム配列が既知であるので(1.7Gb)、短い断片を大量に読むことのできる次世代シークエンサーを使い、読まれた短い断片を既知の配列にアセンブルすることで、全ゲノムの配列を解読することが可能である。小笠原諸島には、父島に1965年に侵入し、母島に1981年に侵入した。父島集団と、フロリダ集団の形態を比較すると、小笠原の集団で頭部のサイズが小さくなっている傾向にあったが、母島の個体は、フロリダの個体と父島の個体の中間であった。採集した小笠原父島の8個体、フロリダの8個体のゲノムを次世代シークエンサーSOLiDおよびIlliminaを用いてre-sequenceを行った。得られた断片配列のデータを既知のグリーンアノールのゲノム配列にアセンブルし、SNP解析、ゲノム中の遺伝的変異量の解析を行った。シーケンス済みの24個体について、2集団内のnucleotide diversityの解析を行った。Small-chromosomeであるLG染色体を解析した結果、全ての染色体において移入後集団である父島個体の方が、遺伝的多様性が高いという結果になった。
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