本研究の目的は、生物群集の種多様性維持機構を、生物地理学、群集生態学それぞれの視点から分析し、生態プロセスとマクロ進化プロセスを統合した研究アプローチの検討することである。これに関する総説を発表し、各論の研究として以下の3編の論文を執筆し投稿した。 1)Geographical patterns of butterfly species diversity in the subtropical Ryukyu Islands : the importance of a unidirectional filtere ffect between two mainlands. この論文では、琉球諸島における蝶群集の種多様性パターンに対する歴史プロセスと生態プロセスの相対的重要性を分析し、地理的なフィルター効果と蝶の気候ニッチの相互作用によって、島レベルの蝶群集の多様性パターンが形成されることを明らかにした。 2)Geohistorical and ecological factors on patterns of woodyplant diversity in the Japanese Archipelago. この論文では、日本列島スケールでの樹木種の分類学的β多様性と系統的β多様性の地理的パターンを検証し、日本列島レベルでの樹木種集合パターンに対する種分化プロセスと生態プロセスの相対的重要性を明らかにした。 3)Relative importance of geographical constraints on global diversity patterns of mangroves and seagrasses. この論文では、全球スケールでのマングローブとウミクサの種多様性パターンを分類学的多様度と系統的多様度に基づいて検証し、各分類群の集合パターンを、進化的な仮説(創造の中心仮説と地理的分断仮説)と生態的な仮説(環境勾配に伴う種のソーティング仮説)に基づいて明らかにした。 以上の論文は、国際学会で発表すると同時に、現在投稿中である。
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