申請者らが2007年に発見報告した新奇青色光受容体オーレオクロム(AUREOCHROME)は青色光によって活性化される転写因子で、褐藻やケイ藻を含む黄色植物(Stramenopile)のみに保存されていることが分かった(Ishikawa et al. 2009)。黄色植物の一群であるフシナシミドロでは青色光によって誘導される分枝発生がオーレオクロムの標的反応であることが分かった(Takahashi et al. 2007)が、褐藻類やケイ藻でのオーレオクロムの機能は未知である。 本年度は神戸大学海藻類系統株コレクション(KU-MACC)から得たHalopteris congesta(Reinke)の成長や光形態形成に対する青色光の特異的効果を検出することを目標とした。同藻を15℃に設定した培養庫内を2段に区切り、アルミニウム板や黒布で他段に光が漏れないよう工夫した上で、赤(660nm)と青(450nm)の2種のLEDランプを光源に用い、14時間明/10時間暗の周期で培養した。その結果、Halopteris congestaの成長と扇形に広がる正常な形態は青色光によってのみ達成されるが、赤色光単独では成長はほとんど停止し、3ヶ月後には枯死することを観察した。青色光単独で培養した藻体の色彩と形態は別の低温ショウケース内の白色光下で維持した藻体と区別できなかった。このことから正常な成長と形態形成をもたらすためには青色光が必要不可欠であることが確認できた。 しかし、東日本大地震による停電とその後の度重なる余震による培養庫の移動や震とうが、藻体の成長に傷害的作用を与えたため、培養の継続的観察や成長測定は断念せざるを得なかった。
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