紅葉現象を解明するためのモデル系として、オオカナダモにおける紅葉誘導系を確立し、茎から切断した葉に対し、切断した茎から溶出される1種類の低分子化合物および茎から抽出した2種類の低分子化合物を与えることによってオオカナダモ切断葉の紅葉が誘導されることを予備的な実験によって明らかにしてあった。そこで、後者につき、茎材料を大量に集め、凍結乾燥して保存して抽出・精製のスケールアップをはかった。これにより、2種類ともmgを超える純品を得ることに成功し、^1Hおよび^<13>CNMRによって、その構造を決定した。その結果、両者ともに新規化合物であり、アグリコンに糖が付加された構造であることが明らかになった。そこで、これらについて化学合成し、オオカナダモ切断葉に対する紅葉誘導活性を調べたところ、合成した化合物も天然から抽出・精製した化合物と同様に、紅葉誘導活性があることが明らかになった。さらに、これら化合物について、当初予定していたトレニアの代わりにモデル植物であるアラビドプシスにおいて、紅葉を誘導できる実験系を2種類確立した。一方はこれまでにも報告のある芽生えを高濃度ショ糖を含む培地に移植することによってアントシアニン合成を誘導するものであり、もう一方は芽生えを土に下ろし、これを生長させてロゼッタ葉を展開させたところで強光条件に曝すことにより紅葉できる系を確立した。今後は残されたさらに微量である切断した茎から溶出されるもう1種類の紅葉誘導因子の分離・精製とその構造決定を行うとともに、アラビドプシス紅葉系に対して、これらオオカナダモ由来の紅葉誘導因子がどのように作用するのか、トランスクリプトームおよびプロテオーム解析を通して、その作用メカニズムについて明らかにしていく必要がある。
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