研究概要 |
シロイヌナズナの半優性変異体uni-1Dは、R遺伝子であるUN1遺伝子に機能獲得型変異(uni-1D変異)を持ち、抵抗性関連遺伝子の発現の顕著な上昇など感染応答反応を示す。これまでに、uni-1DをDNAにダメージを与えるEMSで処理すると、元々のuni-1D変異に加えて別の変異が異常に高頻度にUN1遺伝子上に導入されることを見いだしてきた。そこで、この現象に関する更なる知見を得るために、今年度は、EMSで生じるサプレッサー変異の頻度を定量的に解析した。その結果、薬品処理をしない条件で約300株に1株サプレッサー変異が生じるが、EMS0.3%EMSで15時間処理した種子から生じた植物の約1/3からサプレッサーが生じる事が明らかになった。なお、この濃度のEMS処理では種子の発芽にほとんど影響は見られない。また、uni-1D変異体では、感染応答反応としてサリチル酸経路が活性化しているが、サルチル酸生合成酵素のSID2を欠損させたuni1Dsid2をEMS処理を行ったところ、野生型の茎が生じる頻度が約10%まで低下した。なお、変異率の変化にはDNAの修復系の関与が考えられるので、ATM,ATRの欠損変異株におけるサプレッサーの出現頻度も定量的に測定したところ、0.1%EMSで種子を15時間処理したところ、uni-1Dだけだと出現頻度が約2%であったが、uni1Datr約10%となり、ATRがこの変異に関与する可能性が示唆された。なお、uni-1Datmは約1.8%であり、ATMは関与しない可能性が高い。
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