植物はRタンパク質による病原菌が生産するエフェクターを認識し、植物に免疫応答反応を引き起こす。Rタンパク質は核酸結合配列とロイシンに富む配列の繰り返し(NB-LRR)を持っている。各Rタンパク質は特異的なエファクターを認識するので、Rタンパク質は進化の過程で多くの変異を獲得したと考えられており、事実、R遺伝子は同一アリルでも変異が多い。しかし、変異がどのように引き起こされたかその機構を調べる手段は存在しなかった。我々はシロイヌナズナの新規の優勢変異株uni-1Dが、R遺伝子の一つであるUNIが常に活性型のタンパク質を産生することで免疫反応の一部が恒常的に活性化していこと、並びに、ヘテロ遺伝子を持つ個体(uni-1D/+)でも、花茎の先端の茎頂分裂組織が退縮し、数個の花が着いただけの短い花茎が生じる事を明らかにした。さらに、uni-1D/+は約0. 5%の個体で花茎が野生型並に伸長する復帰変異が生じ、それではuni-1D変異に加えて新たな変異が生じて活性型のUNIタンパク質の機能が失われていた。そこで、uni-1D/+をEMS処理した所、復帰変異の率を約30%まで高める事ができた。さらに、DNA2重切断を行うゼオシンや核酸プールの枯渇によりDNAダメージの修復を止めるハイドロキシウレアを与えた所、やはり復帰変異率の上昇が見られた。これらのデータは、我々がR遺伝子の変異を直接形態の変化でモニターできる実験系を構築できた事を示している。現在、この系を用いて、変異率上昇の分子メカニズムの解明に進んでおり、DNA修復系の関与や、免疫系におけるサルチル酸が関係する信号伝達系が関わる事が示されつつある。
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