高等植物では、RNA干渉(RNAi)とよばれる遺伝子サイレンシング技術が遺伝子機能解析に広く利用されている。我々は、ホウライシダに機能を調べたい遺伝子のDNA断片を細胞内に導入すると、RNAi同様に目的遺伝子の発現抑制により遺伝子サイレンシングを起こすことを発見し、この現象をDNA干渉(DNAi)と名付けた(Kawai-Toyooka et al.2004)。赤色光で誘導される葉緑体光定位運動や光屈性に関わる光受容体の遺伝子NEO1の場合はDNAi効果が次世代まで引き継がれるが、これはDNAi効果が目的遺伝子DNAのメチル化による可能性を昨年度の実験で示した。RNAiではヒストン修飾もDNAのメチル化同様、遺伝子サイレンシングには重要な役割を果たしている。そこで、本年度は、昨年同様NEO1遺伝子を用いて、DNAiにおけるヒストン修飾をChromatin Immunoprecipitation (ChIP)-PCR法で調べた。その結果、DNAiによりサイレンシングされたシダでは、NEO1遺伝子付近のヒストンH3サブユニットの9番目のリジンが脱アセチル化しており、DNAのメチル化と同様にヒストンの修飾も次世代に引き継がれていた。さらにヒストンの脱アセチル化阻害剤をサイレンシングされたシダに添加するとNEO1の遺伝子発現は回復し、DNAiの効果が打ち消された。したがって、DNAiによる遺伝子サイレンシング効果はピストンの脱アセチル化によって引き起こされ、次世代に伝わっていることが示された。
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