研究代表者らは発生遺伝学的な操作により眼点視細胞を完全に欠いたホヤ幼生が、光に応答した運動を示すことをみいだした。この視細胞をもたない幼生の脳には、メラノプシン型のオプシン遺伝子が発現している。本研究では、メラノプシンが視細胞欠損幼生の光応答を担っているという作業仮説に基づいて、この光応答の発現機構の解明に取り組んでいる。2011年度は次の成果を得た。 ホヤ・メラノプシン遺伝子(Ci-opsin4)の発現調節領域を単離し、蛍光レポーターに連結した融合遺伝子を組込んだプラスミドを構築した。このプラスミドをホヤ胚に導入し、メラノプシンを発現する細胞を解析した。Ci-opsin4を発現する細胞は、脳胞後部と尾部後方の背側にみられ、いずれもその形態からニューロンと考えられた。otxをノックダウンしたホヤ幼生(otxモルファント)は、眼点視細胞をもたないが、光刺激に対する反応を示す。ci-opsin4を発現する細胞は、その位置から、いずれもotxモルファントに存在すると考えられた。otxモルファントの光応答にCi-opsin4が関わる可能性を、遺伝子ノックダウン実験により検証した。Ci-opsin4を単独でノックダウンしたホヤ幼生は、光には応答するが、再び暗条件に戻したときの急激な運動抑制がみられなくなった。otxとの二重ノックダウンを行ったところ、otxモルファントの光応答が消失した。以上の結果から、ホヤ・メラノプシンはotxモルファントの光応答を担う光受容体であることが示唆された。 また、新たに3つのオプシン遺伝子がホヤ幼生の眼点以外の部位で発現することを明らかにした。さらに、本現象の普遍性を検証するために、メダカのメラノプシン遺伝子を複数同定し、すくなくとも1つは脳の特定の部位で発現することを見出した.
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