研究課題
ミトコンドリア(mt)は細胞内共生したバクテリアを起源とし、バクテリア型のミトコンドリアDNA(mtDNA)を保持する。mtは祖先真核生物で獲得されたとすると、祖先的真核生物のmtDNAは祖先的な特徴をもつ可能性が高い。ヤコバ類Reclinomonasはゲノムサイズ・遺伝子数が最大である「祖先的」mtDNAを持ち、祖先的真核生物の候補の1つである。ユーグレノゾア、ヘテロロボーサ、ヤコバ類は単系統であり、近年ディスコバ生物群と総称されている。これまでに我々が行った分子系統解析により、新奇真核生物Tsukubamonas globosa(TKB055株)はディスコバ生物群の新たなメンバーであることが判明している。本研究の目的は、T.globosaを(1)形態観察、(2)網羅的発現遺伝子(EST)解析と大規模分子系統解析、(3)mtDNAの全ゲノム配列の決定、を通じた原始真核生物細胞に関する新たな知見の獲得である。H23年度には以下の作業を行った。1.次世代シークエンス用cDNAライブラリーを作製し、網羅的発現遺伝子(EST)解析を行った。このデータからT.globosaのディスコバ生物群内での系統的位置を決定するため、系統解析に用いる160遺伝子程度を選定し予備的な系統解析を開始した。2.Rolling Circle Amplification(RCA)法により増幅したmtDNAサンプルからDNAライブラリーを作製し、パイロシークエンスを行った。その結果T.globosa環状mtDNAゲノムの塩基配列を完全決定した。完全決定されたmtゲノムは約47kbpであった。
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