パルマ藻は、海洋で最も重要な基礎生産者である珪藻の起源の解明の鍵を握ると予想されながら、培養が不可能なため実体が全く不明であった。しかし、我々は細胞内に取り込まれた珪素を検知する蛍光色素(PDMPO)を用いた単離法によりパルマ藻の単離培養に世界で初めて成功した。本研究は、この単離法を用いてパルマ藻の培養株を複数取得し、培養株を利用した、生育環境、系統的位置、シリカの殻の形成過程及び生活史の解析により、「パルマ藻とは何か?」を明らかにし、パルマ藻と珪藻の進化過程の解明の手がかりを得ることを目的としている。 昨年に引き続き、パルマ藻の生物特性の解明のため、(1)昨年単離した複数種のパルマ藻と極近縁種ボリド藻の培養株との比較による系統的位置の決定、(2)電子顕微鏡を用いた形態観察によるシリカの殻形成過程の解析、(3)培養実験による生活史の探索、(4)生息現場観測と培養実験による生育環境の推定を行った。 その結果、パルマ藻と極近縁のボリド藻の複数の単離培養株に対し、昨年よりさらにミトコンドリア由来の遺伝子を対象遺伝子として増やすことにより、分子系統解析を進め、相互の系統関係を明らかにした。パルマ藻のシリカの殻形成過程については、走査電子顕微鏡観察により、珪藻とは異なる分裂過程を発見しつつある。パルマ藻の生活史については、シリカの殻を持つ通常のステージとは異なる生活史のステージを持つことが他の株でも観察され、検証を進めている。パルマ藻の生育環境の解析については、通年の生育環境について、親潮域での現場観測と培養実験により特定することができた。
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