研究概要 |
タンパク質は,生体内で離合集散系を含む集合体を形成し,高度に制御された仕組みで動的に働く.その仕組みにおいては,各々のタンパク質から形成されるヘテロ複合体や同一酵素の異なる反応フォームから形成されたヘテロ複合体が同時に存在することがある.21世紀に入り,分子生物学は,個々の遺伝子とその産物であるタンパク質を基盤とした研究を超え,その離合集散系における分子の集合体形成と高度に制御された働きの仕組みを解き明かす新局面を迎えている.その仕組みを解明する上において,様々なヘテロ複合体の形成を自由自在に制御することができるならば,分子生物学の様々な局面において新たな展開を導き出すことができよう.本研究は,バイオインフォマティクス,タンパク質工学,遺伝子工学を駆使し,ヘテロ2およびヘテロ3量体形成を制御・促進できる汎用のタグをデザイン・作製することを目的としている. 昨年度,タンパク質立体構造のデータベースPDBに登録された3A分解能以上の蛋白質結晶構造からヘテロ2量体を形成する2HA-tagの候補を見つけたため,ヘテロ2量体を形成するタグの開発を先行させた.本年度は,見つけたヘテロ2量体を形成する候補をそれぞれモデルタンパク質へ融合したサンプルの発現構築・精製およびヘテロ2量体形成に及ぼす効果の検討を行ったところ,発現構築に難航した.ヘテロ2量体を形成するため,2HA-tagのペアで融合したサンプルを調製しなければならない.様々な条件を検討した結果,ペアで融合したサンプルの発現構築に成功した.現在,大量調製およびテロ2量体形成条件の検討を行っている最中である.
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