研究概要 |
糖脂質の一種であるガングリオシドGM2を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いて神経芽腫由来のGOTO細胞を染色すると多数の斑点状の染色像が得られることから,GM2を主成分とする脂質ラフトの可視化に初めて成功したと考えられる。これら斑点状の染色像とラフトのマーカーとみなされているフロチリンの染色像が良く重なることも,GM2ラフトであることを強く支持する。本年度はこのGM2ラフトのエンドサイトーシス過程を詳細に検討し,以下の成果を得た。(1)GM2ラフトの動態をAlexa Fluor555標識抗体でモニタリングした結果,GM2ラフトは通常は,トランスフェリン受容体に代表されるリサイクルエンドゾーム系を介して定常的に細胞内輸送されていることが明らかになった。(2)コレステロール包接試薬シクロデキストリンを作用させてラフトの構成成分であるコレステロールを引き抜き,ラフト構造を不安定化すると細胞内輸送経路はリサイクルエンドゾーム系からライソゾームに至る分解系に変化することが判明した。これは,これまで未知であった脂質ラフトの細胞生物学的な機能がコレステロール代謝の基地である可能性を示唆するものであり,今後の研究の発展が期待される。脂質ラフトが細胞間コミュニケーション等の情報伝達の基地であることを示唆する研究は多数なされているが,脂質ラフトがコレステロール代謝の基地(貯蔵庫)としての重要な役割を果たしている可能性を示唆したのは初めてであり興味深い。
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