ユビキチンリガーゼ(E3リガーゼ)による基質の特異的な認識メカニズムを高次構造の観点から解明することは極めて重要である。しかし、X線結晶構造解析やNMR解析が困難であったり、大腸菌での発現も困難なE3リガーゼの場合、基質の認識メカニズムの解析には技術的なブレークスルーが必要である。我々は、小胞体関連分解(ERAD)に関与する膜貫通型E3リガーゼHrd1およびDoa10について、機能-構造情報を得るために、in vivo部位特異的光架橋法という新しい手法の導入を試みた。 最初に、デグロンと呼ばれる酵母のDeg1配列を適当なレポーター遺伝子に融合して、酵母細胞のサイトゾルで発現させ、Doa10との相互作用の追跡を試みた。過去の研究によると、Deg1配列中の両親媒性ヘリックスが認識に重要という知見があり、その部位ヘアンバーコドンの導入を始めた。しかしながら本年度の途中で、従来考えられていたDeg1認識のメカニズムとは異なる新しい概念(N末端のアセチル化がDoa10による認識に関与する)が報告された。現在はDeg1の解析を継続しつつ、Hrd1-Hrd3相互作用の解析を開始することも検討している。本研究によって膜貫通型Hrd1-Doa10 E3リガーゼの解析にin vivo部位特異的光架橋法を導入できれば、様々なE3リガーゼの認識メカニズムの解析へ適用が期待される。
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