細胞コミュニティの秩序維持機構として、リガンドと受容体を介した情報伝達機構は重要である。本研究は、新規モデルとして「特定核蛋白質が核間をシャトルし、細胞コミュニティを時空間的に制御する」との仮説の検証と証明を行うことを目的とする。 1.細胞核間シャトル蛋白質の同定:ストレス依存性に細胞外遊離し、自己保護能を有する核蛋白質NDI(仮称)が、細胞核間シャトル能を有することを明らかとした。 2.核内外相互作用分子の同定:機能プロテオミクスの手法を用いて、細胞外NDIが核内にシャトルされるまでに形成される蛋白質複合体群をMALDI-TOFを用いて網羅的に同定した。細胞膜・細胞質・核において数十個の分子の同定し、核内分子としては12種を同定した。加えて、不明であったNDIの細胞膜受容体候補分子の同定にも成功した。 3.核シャトル蛋白質のバイオイメージング:標識NDIを細胞外処置し、核内に移行するか否か検討した所、細胞種によって核内に移行するもの、細胞質に内在化するといった異なる挙動を示した。本結果は、細胞が発現する機能分子の有無により決定されると想定されることから、前述の細胞膜受容体の有無等、また同定分子群の機能調節機構を明らかとすることが必要であると考えられる。 自己保護因子NDIの核内相互作用分子群から、核内にシャトルすることでエピジェネティクス機構を駆動することが示唆された。本分子は、膜受容体を介した情報伝達機構も有することから、NDIの情報伝達機構を1細胞レベルでなく、脳・神経系細胞コミュニティレベルで明らかとすることで、本分子の秩序維持機構の制御基盤解明が期待される。
|