プロテアソームはユビキチン依存性タンパク質分解系において最終段階を担う巨大で複雑な細胞内タンパク質分解装置である。プロテアソームは、酵母や癌細胞ではプロテアソームは主に核に存在し機能しているが、プロテアソームがどのような機構で核に輸送されるかはほとんどわかっていない。また、プロテアソームは約70個のサブユニットから形成されるが分子集合のどのタイミングで核に移行するのか、またどの輸送担体に依るものか未解決である。本課題では、遺伝学的手法・細胞生物学的手法を駆使して、プロテアソームの形成の場と核細胞質間輸送の機構を明らかにすることを目的とする。 平成22年度はプロテアソームサブユニットの推定上の核移行配列(NLS)についてGFP融合プラスミドを作製し、実際にNLSとして機能するか解析した。その結果、プロテアソームのサブ複合体BaseおよびCPについてNLSを決定することができたがLidについてはNLSを同定することができなかった。しかしながら、LidについてはNLS配列をもつプロテアソーム結合タンパク質Sts1がアダプターとして機能することが他グループより報告された。現在、Base、CPのNLSとSts1の関係を解析中である。一方、蛍光相関分光法を用いた生細胞イメージング法により、細胞内のプロテアソーム動態を解析したところ、プロテアソームの構成サブユニットはほぼ全て複合体に取り込まれていること、インポーティン変異体を用いてプロテアソームの核移行を阻害した状態でもプロテアソームが完成していることを明らかにした。このことは、プロテアソーム形成は核内ではなく細胞質で起こっていること、複合体として核膜孔を通過することを強く示唆している(論文投稿中)。
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