研究概要 |
バクテリアゲノムを大規模に改変したり入れ替えたいという要望は確実に存在する。それは、ミニマムゲノムに代表されるような生命に必要な最小限の遺伝子の決定や、微生物の代謝経路を遺伝子的にデザインし制御することで、有用物質を効率的に生産させるということである。これまでこのようなバクテリアはゲノムを相同組換えによって部分的に欠失させることで作成されてきた。しかしながら、Gibson D.G.らは800kbp程度のMycoplasma全ゲノム合成が可能であると報告したのである(Science 319,1215(2008))。つまり、この全ゲノム合成とバクテリアゲノム導入法が組み合わされば、最小ゲノムバクテリアの創出や物質生産バクテリアの創出がきると考えられる。そこで我々は、大腸菌のゲノムを他種の大腸菌もしくは他属の細菌と完全に入れ替える技術開発を行う。昨年度、サルモネラと大腸菌の融合をおこない、その菌株の解析を行った。Solidシステムを用いた全ゲノム解析では、大腸菌標準株のゲノム配列に対して50%程度一致した。しかしながら、Solidシステムから得られる配列情報はそれらすべてをアセンブリして一つのゲノム配列を作成するといった目的には向かない。これは、1本当たり得られる配列情報が75bpと短いためである。そのため、今後は未知配列のアセンブリをおこなうことが可能なイルミナシステムでのシークエンスを計画している。また、大腸菌の融合方法もPEG法のみならず、他の方法も検討を行った。1細胞同士の融合を可視化し、融合から再生までを可視化することを目的として、顕微鏡下に電極を作成し、バクテリアプロトプラストの融合を試みた。融合に先立ち、パールチェーンが形成される様子を観察することに成功した。今後は条件を検討し、融合が起こる条件を確立する。
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