研究課題
高強度の近赤外フェムト秒レーザー光を顕微鏡下で細胞培養液に集光すると、効率的な多光子吸収により集光点で爆発現象が引き起こされる。この爆発現象により発生する衝撃力は、ミクロンオーダーの領域に局在するため、1細胞の局所領域に機械刺激を加えられる。本研究では、この局所的な機械刺激を単の細胞に加えた時に引き起こされる細胞活性の変化を調べ、細胞の機械刺激応答を1細胞レベルで明らかにする新しい解析手法の確立を目指している。本年度は、筋芽細胞と神経細胞にカルシウムインディケーター(Fluo-8など)を添加した細胞を培養し、それらの培養細胞の横にフェムト秒レーザーを集光照射し、細胞の活性変化をレーザー照射位置依存性、照射パルス間隔依存性として調べた。その結果、レーザー照射強度90nJ/pulse以上では、衝撃力の印加回数に依存したが、70nJ/pulseでは、衝撃力の印加回数依存性はみられなかった。90nJ/pulse以上にみられる照射回数に依存している成分は、複数回の衝撃力印加により、細胞膜が物理的損傷を受けたことに起因すると考えられる。一方、70nJ/pulseにみられる衝撃力印加回数に依存しない応答は、細胞が1ms(1/1000Hz)より短い時間を感知し、単発の衝撃力により、Ca^<2+>濃度に変化がもたらされた結果である。衝撃力による細胞内Ca^<2+>濃度上昇の過程として(i)細胞培養液中のCa^<2+>が細胞内に流入した可能性、(ii)細胞内にCa^<2+>が貯蔵されている小胞体から細胞内に放出した可能性が考えられる。Ca^<2+>を含まないCa^<2+>-free蛍光測定用緩衝溶液を用いて同様の実験を行ったところ、Ca^<2+>濃度が増加する細胞はみられなかった。これは、衝撃力に起因する細胞内Ca^<2+>濃度上昇におけるCa^<2+>濃度の上昇過程は、(i)に起因することを示唆する。また、電位依存刺激によるCa^<2+>濃度上昇が確認されている神経細胞でも同様の実験を行ったところ、衝撃力印加後にC2Cl2と同じCa^<2+>濃度上昇が観察された。
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