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光によってタンパク質や遺伝子の活性を制御する実験系は、これまでに実用化されているものが少なく、実現すれば、任意の遺伝子やタンパク質の機能を、これまでにない精度で計測・分析することが可能になり、生命科学分野における画期的新技術を提供する。そこで本研究では、申請者らがこれまでに同定したクリプトクロムを用いて真核培養細胞等において、任意の遺伝子やタンパク質の活性を光によって制御する系を構築することを目的とした。研究計画書に基づき、初年度にはまず、酵母のツーハイブリッド系を利用して、クリプトクロムと光依存的に相互作用する分子を探索した。ツーハイブリッド系によるスクリーニングのためにまず、新規のニワトリクリプトクロム分子が大量に発現するヒヨコの網膜よりcDNAライブラリーを作成した。そこで次に、クリプトクロムと相互作用する分子を探索した結果、光依存的に解離・結合する分子を同定することができ、CRIPsと命名した。CRIPとクリプトクロムを含む酵母は、暗所で生育するが光によって生育が停止した。この性質について光強度依存性および光波長依存性を比較したところ、光による生育阻害は青色光において顕著であり、数十ルクスの非常に弱い光によっても十分に阻害されることがわかった。これらの結果は、本システムが真核細胞である酵母において光スイッチとして機能し得ることを示している。上記の結果と並行して、クリプトクロムとCRIPの網膜内での発現部位を検討したところ、網膜神経節細胞において共発現していることが判明し生体内においても相互作用していると推定された。最近の研究によって、クリプトクロムは光受容のみならず、光のエネルギーを利用して磁気を受容センサーとして機能することも判明しつつあり、本研究の結果は、クリプトクロムを光あるいは磁気センサーとして利用するための基礎研究として重要な成果と考えられる。
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