核内におけるゲノムDNAの配置が遺伝子の転写に関わることが示唆されており、近年、核内でゲノムを3次元的にマッピングする技法の需要が高まってきている。核内でのゲノムのマッピングする技術は現在のところfluorescence in situ hybridization (FISH)によるところが大きいが、FISHでは核に対して塩酸処理、プロテアーゼ処理などの多くのプロセスを要することから正確な核内の立体構造を保持できているかということが懸念される。そこで、なるべく生細胞に近い条件で核内のゲノムをマッピングする手法を開発することが本研究の目的である。 23年度までの試みにおいて、相同的組換え蛋白質RecA、Rad51を大量に調製し、マッピングを行った。ターゲットはテロメア領域、セントロメア領域を用いた。しかしながら、非特異的なプローブの結合が依然高い頻度で発生するため、ターゲットとする領域を明確に検出することができなかった。 この問題に対し、当初の方針を変更し、プローブにN-メチルピロール・N-メチルイミダゾールポリアミドを用いることにした。N-メチルピロール・N-メチルイミダゾールポリアミドは、DNA二重らせん構造のマイナーグルーブに塩基配列特異的に結合する人工DNA分子である。これらのポリアミド類はDNAの各塩基対と特異的な水素結合を介して結合するので、ピロール・イミダゾールの配列を変えることにより配列認識能を制御することができると期待できる。実際、京都大学杉山教授と共同で、テロメア配列にターゲットできるポリアミドを合成し、ヒト細胞のテロメア配列にターゲットできることを示した。
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