近年、細胞集団中に生じた局所的な増殖因子や機械的刺激がコロニー全体の細胞へ何らかの形で情報を伝搬・交換するように見える現象が多く報告されている。そこで、本研究では局所的な刺激に対して細胞の集団的挙動の解析を行うことを目的に、E-カドヘリンを直径1. 3μmのポリスチレン粒子に固定化した細胞認識マイクロ粒子を固定化し、それら粒子の作用が細胞集団にどのように認識されるのか検討した。その結果、E-カドヘリンを固定化した粒子は細胞コロニーの周辺部位にのみに作用し、コロニー全体の集団運動を抑制する作用があることが確認された。さらに、周辺部位からコロニー内部の細胞へMAPkinase ERK1/2の脱リン酸化が伝搬していく様子が確認された。他方で、細胞集団の一部の細胞に機械的な刺激を与えるとERK1/2のリン酸化は刺激を受けていない細胞へと伝搬することも確認された。このことから、コロニーを形成する細胞はE-カドヘリンを介して力のバランスが保たれており、そのバランスの変化がE-カドヘリンを介して細胞間情報伝達を促していることが示唆された。
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