真核細胞では、遺伝子の転写やスプライシングなどの反応が、核スペックルやPMLボディなどの核内構造体によって形成される微小核内空間(場)で密接に連携しながら進行する。これらの核内構造体形成に影響を与える、放線菌培養上清から分離した化合物をバイオロジカルプローブに用いて、核スペックルに分布するスプライシング因子の動態制御とスプライシング反応への影響について解析した。まず、核スペックルの肥大化をもたらすことを指標に放線菌培養上清1870-14aから精製したToyocamycinについて解析したところ、スプライシング因子SF2及びSC35が、Toyocamycin処理後30分で核スペックルに強く集積していくことが示された。スプライシング因子の核スペックル集積に伴い、Clk遺伝子のエキソン含有型選択的スプライシングが促進された。アデノウイルスE1A遺伝子の選択的スプライシングにおいては、Toyocamycin処理は遠位5スプライス部位選択の促進を引き起こした。一方、核スペックルからpoly A^+RNAが分散する放線菌培養上清1891-1aから精製したtubercidinは、核スペックルからスプライシング因子SF2及びSC35の遊離分散を引き起こし、Toyocamycinとは逆に、Clk遺伝子のエキソンスキッピング型選択的スプライシングを強く促進した。また、転写と共役したスプライシング反応は阻害しないが転写後スプライシングを行うCol1A1遺伝子exon24のスプライシングは阻害することが示された。これらの結果は、核スペックルがスプライシング因子の核内分布を調節することで選択的スプライシングを制御している可能性、及び核スペックルが転写後スプライシングを行うイントロンのスプライシング完了をチェックするmRNA品質管理装置としても機能している可能性を示唆する。
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