細胞分裂など、細胞の形態が変化するときに、細胞骨格である微小管に対して機械的ストレズが生じ、その応答として様々な生化学・力学反応が制御される。微小管を介した機械刺激の感知機構は様々な細胞内現象で知られているが、その実体は不明である。本研究では、3次元空間での力学計測系技術に基づき、機械刺激に対する微小管のダイナミックな形態の変化や、機械的刺激がかかった微小管に相互作用する分子モーター蛋白質への影響を調べ、微小管(モーター複合体)がメカノセンサーであることを検証することを目的とした。平成22年度は、計測装置に関しては、3次元で粒子の位置を計測できる光学系に磁気力を加えることのできる系の導入を試みた。まず微小管の長軸に対してねじれ方向の負荷を加えるため、適当な磁石の選択を行った。適当な磁力をかけるためには、磁石の向きや位置を変えることも必要で、顕微システムへの取り付け方法を検討した。サンプルに関しては、微小管の片端をガラス面に吸着させること、微小管に磁気ビーズを結合させる条件検討を行った。磁気ビーズがガラス表面に吸着しない実験条件、微小管依存性モーター蛋白質・キネシンが微小管上を運動する実験条件が最適化されていないため、更なる改善が必要である。赤外レーザーを用いた光ピンセットシステムを用いて、微小管へ伸長・曲げ・ねじれ刺激を加え、相互作用する微小管依存性分子モータータンパク質の挙動への影響や、微小管末端の重合・脱重合速度への影響も定量化してゆく。
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