細胞分裂など、細胞の形態が変化するときに、細胞骨格である微小管に対して機械的ストレスが生じ、その応答として様々な生化学・力学反応が制御される。微小管を介した機械刺激の感知機構は様々な細胞内現象で知られているが、その実体は不明である。本研究では、3次元空間での力学計測技術に基づき、機械的刺激がかかった微小管に相互作用する分子モーター蛋白質への影響を調べ、微小管(モーター複合体)がメカノセンサーである可能性を検証することを目的とした。平成23年度は、生体分子を計測する装置にの開発研究に関して、3次元空間で粒子の位置を計測できる光学系に、磁気力(磁石)、もしくは赤外レーザーによる光ピンセットによる操作ができる系の導入を試みた。昨年度に引き続き、微小管の長軸に対してねじれ方向の負荷を加えるための適当な方法で検討した。微小管のねじれの定量のために、微小管の複数箇所に量子ドットを結合し、これらの相対位置より微小管のねじれ具合を見積もる方法を検討した。微小管に対して曲げや伸びを引き起こす操作は、微小管にラテックスビーズを結合させ、ビーズを光ピンセットで捕捉して操作する方法を検討し、微小管へのねじれの場合と同様の方法で見積もった。3次元方向へのバネ定数などの較正方法も、複数の方法を検討した。以上より、外部からの操作により微小管に力学的な負荷をかける方法の開発が進み、微小管に対して伸長・曲げ・ねじれ刺激を加え、相互作用する微小管依存性分子モータータンパク質の挙動への影響を定量化してゆく方法の最適化を試みた。
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