研究課題
脊椎動物の初期発生においては、卵細胞に蓄積されたRNA・タンパク質が中・内胚葉形成、背腹・前後軸などの体軸形成に重要な役割を演じている。これまでの、アフリカツメガエルを用いた分子生物学的解析やゼブラフィッシュを用いた遺伝学的解析から、胚葉形成や体軸形成に関与する母性遺伝子の幾つかは同定されているものの、未だ胚発生を制御する多くの母性遺伝子が不明である。本研究では、姉妹染色分体交換を高頻度に起こすと考えられるBloom(blm)遺伝子変異体メダカを用いて、初期発生を制御する母性遺伝子効果変異体のスクリーニング方法の開発を試みた。最初に、アルビノ変異をヘテロ接合体として有し、blm遺伝子変異をホモあるいはヘテロ接合体として有するメダカ胚を作製したところ、網膜色素が白と黒のまだらになる個体が低頻度で現れた。このことは、blm遺伝子欠損により、アルビノ遺伝子領域において姉妹染色分体交換が起こり、アルビノ変異をホモ接合体として有する細胞が生じたことを示す。まだらの眼を有する個体の出現率が低いのは、母性由来の野生型blm遺伝子産物が存在することで、姉妹染色分体交換を抑制している可能性があると考えられた。そこで、母性および接合体blm遺伝子の発現を両方欠失させた母性・接合遺伝子混合変異体を作製し、加えてアルビノ変異をヘテロ接合体として有するメダカ胚を作製したところ、高頻度にまだらの眼を有する個体を得た。さらに、母性遺伝子混合変異体のモデルとして、Fgf受容体1遺伝子fgfr1にヘテロ接合体変異を有しblm遺伝子変異をホモ接合体で有する雌個体を作製し、fgfr変異ヘテロ接合体雄と交配したところ、fgfr1母性遺伝子混合変異体の表現型(尻尾が無くなるとともに眼が一つ)を示す胚が得られた。以上の結果から、blm遺伝子変異体を用いることで母性遺伝子混合変異体を作製できることが明らかとなった。
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Journal of Comparative Neurobiology
巻: (in press)
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