研究課題
核ゲノムにコードされる遺伝子には一般にイントロンが含まれるため、そのcDNA全長塩基配列を複数の動物種から迅速に並列解読して分子系統解析を行うことは従来容易でなかった。本研究では、その目的のために次世代シーケンサーを用いたアプローチを試みる。平成22年度は、シマヘビ(ナミヘビ科)の肝臓からmRNAを調製してランダムプライマーからの逆転写を行い、Roche GS FLX型次世代シーケンサーによって約21万readのcDNA断片塩基配列を決定した。これらをアセンブルさせBLAST解析を行ったところ、200以上の遺伝子座のcDNA塩基配列を迅速かつ正確に決定できた。これらは主として高発現のハウスキーピング遺伝子から成るが、中には組織特異的な発現パターンを示すと思われる遺伝子も含まれていた。もっと発現量が少ない遺伝子では十分なread数が得られず、次世代シーケンサーのデータだけからcDNA全長塩基配列を決定することは困難であった。しかし、得られた部分配列データに基づきRACE法を適用することで、cDNA全長塩基配列を比較的容易に決定できた。これらの遺伝子座の中には、脊椎動物の広範な分類群においてゲノム中で単一コピーである、適度な速度で分子進化するなどいくつかの要件に照らして、分子系統解析に適すると判断されるものが相当数含まれていた。今後、本研究のアプローチを爬虫類の他の分類群にも適用して、得られたデータをシマヘビのデータと併せて分子系統解析を行いたい。
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BMC Evolutionary Biology
巻: 10 ページ: 141
Annual Review 2009. Graduate School of Natural Sciences, Nagoya City University
巻: 14 ページ: 35-43
http://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/~kuma/index.html