研究課題
本研究の目的は、従来の研究成果を基盤に研究を進め、ミトコンドリア分裂装置の全構成タンパク質を明らかにし、そこから真核細胞誕生の謎を解明することであった。次の項目について解析を行った。1.ミトコンドリア分裂装置を構成する全タンパク質とその遺伝子の同定単離ミトコンドリア分裂装置を、液クロ・MSにかけた。その結果、細菌の細胞分裂に使われたFtsZに加え、新たに細菌由来と思われるZap様タンパク質が確認された。また細胞核ゲノム由来のダイナミン(1Dnm1)が観察された他、新たにほとんどの細胞小器官の分裂を同時に制御するタンパク質「T」が見つかった。2.複膜系・単膜系オルガネラの分裂機構を再検討した上記のと合わせて、オルガネラ全体の分裂の検討を行った。複膜系のオルガネラ分裂に関しては基本的にはこれまで観察してきたのと同様の結果であったが、単膜系のゴルジ体、ERの分裂は細胞核の分裂に同調、依存していること、リソソームとマイクロボディの分裂はミトコンドリアの分裂に接触・依存していることが明確となった。更にこれらERとマイクロボディの分裂に直接に関わる細胞核ゲノムコードのタンパク質(Dnm1)が見つかった。3、オルガネラの分裂の最後に起こる細胞質分裂にあらたな知見全オルガネラが分裂する最後に細胞質分裂が起こる。この分裂に多くのタンパク質が関与しているが、その内のEF1αが、真核細胞誕生の際の始原的分裂装置となっていることが明らかとなった。4.解析から分かった全オルガネラの分裂増殖を統御する遺伝子従来の知見と合わせて、進化の早期に細胞核が共生細菌を捉えるために保有していた幾つかの遺伝子が、全オルガネラの分裂増殖に機能するという新たなモデルを提示した。
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Protoplasma
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