光はヒトの生体リズムに強くかかわっており、特に夜間の浴びる光は睡眠や体温、内分泌リズムをかく乱し、人の健康に大きな影響をもたらす。しかし、現代生活には夜間の人工照明が必須であり、行動・行為上で必要な明るさを得ることと、生体リズムへの影響を少なくすることのジレンマを抱えている。 本研究は、我々が予備実験から見出した、生体リズムに関わる受光器であるメラノプシンを含む網膜神経節細胞(以下mRGCと略す)の光刺激に対する周波数特性を更に充実させ、それを基に、上記ジレンマを解決する光源・照明装置開発への知見を得ることを目的としている。 本年度は、mRGCの光応答性に関するこれまでの知見をもとに、青色LEDを用いて同一光刺激条件における100Hz周波数変調光と連続光を夜間に90分間浴びた場合の心理評価(眠気、感情・気分評価)および唾液中メラトニン分泌挙動への影響を比較した。その結果、心理的評価においては明確な差を見出すことはできなかったが、周波数変調条件では連続光条件に比べ、そのメラトニン抑制程度は小さい傾向が認められた。このことから、適切な周波数変調を加えることにより視覚系(明るさ感等)には変化をもたらさないが、非視覚系(生体リズム)に対しては影響の少ない夜間照明開発への可能性が示唆された。
|