本研究はこれまで主に眼科による視野異常などを調べる際にのみ用いられてきた視野検査法に対して、研究代表者が提案するターゲット追視時の眼球跳躍運動を元にした頭部非拘束視野形状計測システムのプロトタイプを構築し、これまでの静的視野検査装置に比べて、短時間で計測でき、かつ頭部拘束や長時間の中心点凝視の必要がなく、効率よく必要部分の視野形状の抽出ができることを示すためのデータを蓄積し、視野形状の特徴がテクノストレスなどによる適応をはじめとする、環境に適応するヒトの特性を評価する一指標として用いることができるかを検討するものである。そこで本年度はまず、提案システムを用いて、正常視野領域に提示した視標を正しく評価でき、視野異常領域に提示した視標を不可視点として正しく切り分けることができるかをHFAによる検査結果と比較評価することを目的とした。実験内容としては、被験者に提案システムの計測手順と同様に実験を行ってもらい、提案システムの視野計測原理を利用して、被験者の視野の評価を行った。視標の提示箇所として、実際に緑内障を持つ患者に検査が実施されている検査個所を想定し、HFAによる検査で利用されているHFAの中心24-2の54点とアーマリー中心視標の鼻側提示位置4点の計58点とし、各提示箇所は2回ずつ計測を行った。実験の結果、(1)緑内障性視野異常を検出できたことから緑内障性の視野異常を検出できる可能性が示された。(2)マリオット盲点の位置を視認してしまう被験者が多かったため、瞼の下垂に対する対策やプロトコルの改良、視標の提示手法を変更するなどの余地があることがわかった。今後の展望として、提案システムが絶対暗点と比較暗点の区別を行うためには、背景と視標の輝度比を数段階に変化させ、見えにくさに対して詳細なデータを得ることで、緑内障性視野異常の状態をさらに詳細に把握していく。
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