研究概要 |
14名の乳児被験者についてにおいに対する生理応答を測定した。測定項目は(1)近赤外分光分析法による脳活動,(2)心電図,(3)唾液アミラーゼ活性とした。(2)より心拍数と心拍変動1生解析による交感神経系活動ならびに副交感神経系活動を算出した。自然由来のにおいとしてα-ピネン,リモネン,人工的なにおいとして乳児用製品に添加する香料(ベビーフラワーとする)を用い,対照は無臭(空気)とした。3分間の安静を取った後に3分間のにおい呈示を行い,再度3分間の安静を取った。その間上記(1),(2)を連続的に測定した。また各安静時間終了後,におい呈示終了後に(3)の測定を実施した。 昨年度に測定を実施した3名を加え,17名の被験者について,測定中に入眠・啼泣があったケースを除いて解析を行った。結果として,脳活動では時間とにおいを要因とした二元配置分散分析において時間の主効果が有意であり(p<0-05),においの呈示により安静時より脳活動が上昇していた。しかし対照でも脳活動の上昇が認められ,今後に課題が残った。心拍数においては,α-ピネンにおいてにおい呈示により低下する傾向が認められた。対照とその他のにおいては心拍数の低下は認められず,α-ピネンに特有な作用がある可能性が認められた。交感神経系活動,副交感神経系活動,唾液アミラーゼ活性についてはにおい間の差異,時間的な変化のどちらも認められなかった。 結論として生後1~3ヶ月の乳児において特異的な心拍数の低下傾向が認められたことから,α-ピネンのにおいは経験や価値観に左右されない生体作用を持つ可能性があると考えられる。今後の課題として入眠・啼泣の影響をなるべく減らしながら被験者数を増やしていく必要があると考える。
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