高等植物のオルガネラゲノムは、一般に母性遺伝性を示すことが知られており、ナタネを含むBrassica属植物においても、ミトコンドリアゲノムは母性遺伝することが示されている。しかし、ナタネミトコンドリア中に存在する11.6kbの線状プラスミドは、ミトコンドリアゲノムが厳格な母性遺伝を行う場合であっても、花粉親から次代へ伝達されるというきわめて特異的な性質を持っている。本課題においては、その現象の機構解明を目指して、プラスミドの遺伝性(伝達性及び維持安定性)を制御する核遺伝子群の探索のために、プラスミドの遺伝性を制御するQTL解析を行う。 本年度は、プラスミド伝達率78.8%のナタネ品種「農林16号」と、伝達率が27.5%の品種「Westar」の交雑に由来するF2集団102個体を供試して、連鎖地図の作成とそれを基にしたプラスミドの父性伝達に関するQTL解析を行った。これまでに、167マーカーがマップされ、24の連鎖群を得た。現在までのところ、部繋がっていない連鎖群も存在するが、24のうち22の連鎖群が所属する染色体(A1~C9)を決定した。この連鎖地図をもとにして、QTL解析を行った結果、プラスミドの伝達に関与すると考えられるQTLがA5染色体に2つ、C9染色体に1つ検出された。 今後、このQTL周辺のマーカー数を増やしより詳細なマッピングを行うとともに、QTL周辺のArabidopsisとのシンテニー等を利用して、父性遺伝に関わると考えられる遺伝子の探索を行っていく。
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