研究課題
高等植物のオルガネラゲノムは、一般に母性遺伝性を示すことが知られており、ナタネにおいても、ミトコンドリアゲノムは母性遺伝することが示されている。しかし、ナタネミトコンドリア中に存在する11.6kbの線状プラスミドは、ミトコンドリアゲノムが母性遺伝を行う場合であっても、花粉親から次代へ伝達されるという特異的な性質を持っている。本課題では、その現象の機構解明を目指して、プラスミドの遺伝性を制御する核遺伝子群の探索のために、QTL解析を行うこととしている。昨年度までに、プラスミド伝達率78.8%のナタネ品種「農林16号」と、伝達率が27.5%の品種「Westar」の交雑に由来するF2集団102個体を供試し、連鎖地図作成とプラスミドの父性伝達に関するQTL解析を行い、1374.7 cMをカバーする遺伝地図を作成し、A5、C2、C9染色体に1つずつQTL検出し、それぞれqPpt1、qPpt2、qPpt3と名付けた。今年度は、3つのQTLの中で最も高いLOD値4.97、寄与率25.0%を示すA染色体上のqPpt1について、2011年に新たに公開された近縁種Brassica rapaのゲノム配列を利用して、遺伝地図の精密化とQTL領域の絞り込みを試みた。ナタネのQTL領域周辺のマーカー情報からB. rapaの相同領域を確認し、その配列情報からSSR配列を検索した。作成した80個のSSRマーカーのうち、両親間で多型が検出できた4マーカーはいずれもQTL領域にマップされ精密化が図れるとともに、QTL領域とB. rapaゲノム配列の関係が明らかになり、今後のQTL遺伝子のクローニングに向けた基礎情報を得ることができた。また、この過程で、A5染色体短腕の端部に、これまでに報告のない大きな逆位が存在していることが明らかになった。QTLとの関係は不明であるが、種分化やシンテニーの面から興味深い。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Genes & Genetic Systems
巻: vol.87, No.1 ページ: 19-28
doi.org/10.1266/ggs.87.19