オオハマニンニクとハマニンニクの染色体を1本ずつ保有するコムギ系統を複数の染色体の組み合わせで育成した。両種は同じゲノム(NNXX)をもつ異質四倍性種であり、各染色体を1N~7N、1X~7X、その由来を上付きのrまたはmで記すと、ダブルモノソミック添加系統の中にある2本の異種染色体の関係は、(1)無関係(例えば、1Nr+2Xmの場合)、(2)同祖関係(1Nr+1Xm)、(3)相同関係(1Nr+1Nm)の3つの場合が存在する。これらの系統の減数分裂における両染色体の相互作用を調査した。その結果、(3)の場合でも、異なる種由来の相同染色体は、コムギの遺伝的背景では対合が完全でないことをみいだした。つまり、この場合、減数分裂前期で染色体は、会合するが、キアズマがほとんど見られず、ほとんどの中期細胞で、一価染色体となった。そこで、このダブルモノソミック系統とph1bおよびPh1Iを交配して種子を得、対合の起こりやすい条件下で、両染色体の対合の程度を見る系統を育成した。 一方、染色体対合に影響を及ぼすと考えられる、ゼブラリンの植物の細胞分裂に対する至適濃度を調査するために、サンプルの得やすい根端の体細胞分裂で効果を調査した。その結果、ゼブラリンは低濃度でも染色体切断や構造異常を誘発することを見いだした。この知見を論文にまとめ、学術雑誌に投稿した。 現在は、ゼブラリンを上記ダブルモノソミック系統の減数分裂に投与し、染色体対合および組換えについて観察を行っている。
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