コナギとミズアオイは、ミズアオイ科ミズアオイ属の水田の強害草で、異質四倍体である。日本の水田で最も広く使用されているスルポニルウレア系除草剤(SU剤)に対する抵抗性が、コナギでは日本各地で、ミズアオイでは北日本および東日本で顕在化し、水稲生産上問題となっている。雑草のSU剤抵抗性生物型では、その適応度が低下しているが、コナギでは低下せず、このことがコナギのSU剤抵抗性生物型が各地で顕在化している理由の一つであるとも考えられる。本研究では、適応度の低下がコナギのSU剤抵抗性生物型で認められない理由が、SU剤の作用点であるアセト乳酸合成酵素(ALS)に関する遺伝子の重複による適応度の低下の補償にあると仮定した。この仮説を検証するために、本年度は、まずコナギとミズアオイのALS1およびALS3の全長を新たに解読した。次にコナギとミズアオイのALS遺伝子の重複を明らかにするためにこれらの遺伝子を解析した結果、コナギのALS4とミズアオイのALS2の相同性が極めて高いことを明らかにした。さらに京都府由来のコナギのSU剤抵抗性生物型の1系統では、ALS1およびALS4において同じ部位で同じ一塩基置換が生じていることを明らかにした。コナギやミズアオイの祖先野生種と推定されているホソバコナギとホソバミズアオイの雑種を人為的に作成しようと試みたが、開花期を同調させることができず、改めて試みることとした。
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