研究課題/領域番号 |
22658006
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
冨永 達 京都大学, 農学研究科, 教授 (10135551)
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キーワード | コナギ / ミズアオイ / 除草剤抵抗性 / スルホニルウレア系除草剤 / 雑草 |
研究概要 |
コナギとミズアオイは、ミズアオイ科ミズアオイ属の水田強害草で、ともに異質四倍体である。日本の水田で最も広く使用されているスルホニルウレア系除草剤(SU剤)に対する抵抗性が、コナギでは日本各地で、ミズアオイでは北日本および東日本で顕在化し、水稲生産上大きな問題となっている。遺伝子重複と除草剤抵抗性獲得との関連を明らかにするために、これら両種のSU剤抵抗性獲得をモデルとした。公表されている被子植物アセト乳酸合成酵素(ALS)遺伝子の塩基配列を参考にプライマーを設計し、両種の全DNAを鋳型としてPCRを行い、増幅断片の塩基配列を決定した。得られた両種のALS遺伝子の部分配列に基づき、TAIL-PCRを行い、遺伝子近接領域の増幅と塩基配列決定を行った。その結果、ミズアオイでは、5種類のALS遺伝子様配列が得られ、そのうち2つは偽遺伝子であると推定された。残りの3配列をコナギの既知のALS配列との相同性に基づきALS1、ALS2、ALS3とし、それぞれ塩基配列を決定した。ミズアオイでは、通常SU剤抵抗性を付与するとされているPro197部位のSerへの一塩基置換がALS2において確認されたが、この塩基置換は感受性個体においても確認され、ALS遺伝子ファミリーをもつミズアオイでは、SU剤抵抗性を獲得するのに2遺伝子における変異が必要であることが推測された。ミズアオイのALS2の起源について、祖先種であるホソバコナギとホソバミズアオイを用いて検証する必要がある。また、コナギでは、ALS1においてPro197部位のSerへの一塩基置換とALS5においてPro197部位のLeuへの一塩基置換が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コナギとミズアオイは、ミズアオイ科ミズアオイ属の水田の強害草で、ともに異質四倍体である。現在までに、両種ともに5つのアセト乳酸合成酵素遺伝子様配列を有することを明らかにし、このうちの2つは偽遺伝子であることを明らかにした。また、コナギで2遺伝子座においてそれぞれスルホニルウレア剤に対して抵抗性を付与する一塩基置換を有する生物型を見出した。ほぼ予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、コナギおよびミズアオイにおいてアセト乳酸合成酵素遺伝子座が複数存在することを見い出し、ミズアオイにおいては、複数の遺伝子座における一塩基置換がスルホニルウレア剤に対する抵抗性獲得に必要であることが推測される結果を得た。同じ異質四倍体であるコナギにおいても同様の現象が存在するか否かを明らかにし、遺伝子重複と除草剤抵抗性との関係を検討したい。
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