コナギとミズアオイは、ともにミズアオイ科ミズアオイ属の水田強害雑草で、コナギは東北以南の水田に分布し、ミズアオイは北日本および東日本に分布している。両種とも日本の水田で最も広く使用されているスルホニルウレア系除草剤(SU剤)に対する抵抗性が顕在化し、水稲生産上大きな問題となっている。遺伝子重複と除草剤抵抗性獲得との関連性を明らかにするために異質四倍体である両種のSU剤感受性および抵抗性個体を供試して、SU剤のターゲットサイトであるアセト乳酸合成酵素(ALS)遺伝子のコピー数を確定した。ミズアオイでは、3遺伝子(ALS1、ALS2、ALS3)の塩基配列を決定した。京都府、大阪府、静岡県および福井県由来のミズアオイのSU剤感受性個体では、他の雑草において通常SU剤抵抗性を付与するとされているPro197部位のLeuへの一塩基置換をすべての個体のALS2において確認した。さらに、ミズアオイの宮城県の異なる地域由来のSU剤抵抗性個体では、ALS2の他にALS1あるいはALS3においてPro197部位のSerあるいはAlaへの一塩基置換を確認した。コナギの抵抗性個体においてもALS5(t)の Pro197部位におけるLeuへの一塩基置換に加え、ALS1あるいはALS3におけるPro197部位のSerあるいはAlaへの一塩基置換を確認した。これらの結果から、両種が抵抗性を獲得するためには、少なくとも2コピーにおける一塩基置換を同時に有することが必要であると推定した。両種の各ALS遺伝子の発現量を明らかにし、遺伝子重複との関連性を検討しようとしたが、最終結論には達しなかった。また、各ALS遺伝子の起源を祖先種とのかかわりとの観点から明らかにしようとしたが、結論には至らなかった。
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