研究概要 |
本年度は,茎の水溶性画分(W画分)NaOH可溶性画分(N画分)について,中性糖とウロン酸含量の季別変動の調査を,当年枝と2年枝について実施した.さらに月毎にサンプリングした試料から,粗酵素を調製し,天然基質および各種合成基質に対する活性を調べた.その結果,中性糖はW画分がN画分より多く,年間を通じては12~2月に高い値を示した.ウロン酸含量もW画分の方が多かったが,年次変動については夏季に高い値を示した.酵素活性は,W画分の多糖を用いた天然基質の分解に基づく還元末端の生成量については,2,3月に高い値を示し,4~10月はほぼ一定で推移し,11月~1月はほとんど活性を検出できなかった.各種合成基質に対しては,2,3月にpNP-β-Gal,pNP-β-Gluに対して活性を示したが,他の月ではいずれの基質に対しても活性は認められなかった.以上の結果から,ピタヤの茎においては,2および3月にはβ-Galactosidase様活性とβ-Glucosidase様活性を持つ,いずれもendo型と推定される酵素が発現し,年間を通じてはPolygalacturonaseが一定レベルで発現していると考えられる.ただし,11~1月の冬季には活性レベルが極めて低く,この時期には多糖の分解は抑制されているといえる.今回の酵素の抽出は,20倍量の緩衝液で抽出後,CPC処理によって多糖を除去し,CM-Sepharoseに供して濃縮する方法で行った.これによって従来検出が困難であった活性を見出すことができた.一方光合成特性の解析については,2つの鍵酵素であるPhosphoenolpyruvate carboxylase (PEPC)とNADP-Malic enzyme (ME)のクローニングを終えた.前者については2つのisoformを識別しており,後者については2か所の開始コドンを使い分けている可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
含有される糖質加水分解酵素が,予想以上に量的に少ないこと,さらに季節による変化が顕著であったことが挙げられる.これまで,RT-PCRによって探索したのは,主に夏季の茎についてであったので,検出が困難であったと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,この2,3月の茎にターゲットを絞り,PCR-クローニングによってβ-Galactosidase,β-Glucosidaseの遺伝子の取得を行う.degenerateプライマーは他の植物における相同性に基づいてすでにデザインを終えている.一方,3月の茎より酵素の単離を行い,その諸性質を解析して,endo型,exo型の区別を明確にするとともに,天然基質に対する分解特性も明らかにする.単離には,昨年開発したCPCでの多糖除去法を採用するが,それでも量的に十分量を確保できるとは言い難い.そこで,両酵素に対するcDNAを取得した後,発現系を構築し組換え体を確保することで酵素学的特性の解析を行う予定である.PEPCとMEについては,ノーザン解析等により,発現の相違を明らかにする予定である.
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