研究概要 |
1.リンゴ樹葉圏微生物群の大規模塩基配列解析;昨年度に引き続き、自然農法栽培と慣行栽培の病害発生状況を定期的(5月~lL月)に観察し、採集した葉からリンゴ葉圏微生物診断用マクロアレイ法で、時期別の葉面微生物の多様性を分析した。昨年度選抜した2010年6,月12日と8,月6日試料の葉圏真菌類と細菌類の次世代シークエンス解析データを分析した結果、マクロアレイ法で分析した結果とよく一致し、全区で、Aureobasidium、Cladosporium、Cystofilobasidium、Cryptococcusなどの非病原菌が優占して検出され、自然栽培園ではそれに加えてVenturia inaequalis(黒星病菌)、Altemaria mali(斑点落葉病菌)、Diplocarpon mali(褐斑病菌)なども検出された。検出された真菌類の種数は20種程度で4つの園地間で種数の多様性に大きな違いはなかったが、慣行栽培2園と自然農法栽培1園(K園)では2,3の種が寡占しているのに対し、自然農法栽培1園(MS園)では数種が拮抗して存在していた。ただし、自然農法栽培2園ではAureobasidiumとCladosporiumの2種が寡占していたのに対して自然農法栽培K園で寡占していたのはCladosporiumと病原菌のVenturiaであった。また、2年間の調査で自然栽培K園では他の園地で最優占するAureobasidiumの生息量が有意に少ないことが判明した。 2.リンゴ樹根圏微生物群の大規模塩基配列解析;同上の対象園地から、土壌試料を採集し、次世代シークエンス解析を実施した。真菌、細菌共に慣行防除0園の種類が自然農法栽培園より若干多様であった。優占種にも明らかな違いが認められた。 3.リンゴ葉圏微生物群の適応・進化に関する分析と考察;慣行栽培園の葉圏では化学農薬散布により真菌と細菌の生息が大きく制限されている状況が明らかになった。一方、自然農法栽培2園(K園とMS園)では6月から8月にかけて細菌類の生息量が激増した。そこで、細菌種の次世代シークエンサーのデータを基に細菌類の多様性を解析した結果、門或は属のレベルで多様度には大きな違いは見られず、生息する細菌類の多様性だけで病害虫発生抑制を説明できないことが判明した。また、根圏には極めて多数の真菌類と細菌類が生息しており、栽培方法で優占種が明らかに異なっていた。
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