研究課題
自然環境中に多数存在するスフィンゴモナス細菌群は、「モデル細菌」とは異なる基本的生命原理を有する代表的な「環境細菌」の一群であり、人為起源物質を含む様々な化学物質分解能やゲンランガム生産能など、応用的にも有用で多彩な能力を有している。これまでの研究で、(i)本細菌群のゲノムは可塑性に富み、「環境遺伝子プール」との遺伝子交換を活発に行い、様々な機能遺伝子を受け入れやすい性質を有していること、(ii)その過程にはある種の可動性遺伝因子が重要な役割を果たしていること、が強く示唆されている。本研究の目的は、(1)スフィンゴモナス細菌群の可塑性に富んだゲノムの基本的構成原理の理解、(2)本細菌群の新機能力獲得に関与する可動性遺伝因子の性質の理解、を通じて普遍的な新しい基本的生命原理を発見し、その成果を(3)「環境遺伝子プール」からの有用遺伝子取得法の開発に結び付けることである。本年度は、スフィンゴモナス細菌群の代表株として、全ゲノム情報が判明し、分子遺伝学的手法が確立している有機塩素系殺虫剤γ-HCH完全分解資化細菌Sphingobium japonicun UT26株、および本菌株に特異的な性質であるγ-HCH分解に関与するlin遺伝子群を主な実験材料として用い、UT26株のゲノム動態に挿入配列IS6100が重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、UT26株以外のγ-HCH分解能を有するスフィンゴモナス細菌3株(MM-1株、MI1205株、TKS株)のドラフトゲノム解析を実施し、これらの株がそれぞれ独立にlin遺伝子群を獲得してγ-HCH分解菌となったことを示唆する知見を得ると共に、スフィンゴモナス細菌特有のプラスミドの構造を明らかにした。また、その他環境細菌を材料とした関連研究も実施した。
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