研究概要 |
ロドコッカス属細菌は、環境保全やバイオテクノロジーにおいて高い重要性を持つ、グラム陽性細菌である。Rhodococcus jostii RHA1株の全ゲノム解析の結果、RHA1株はポリケチド合成酵素(PKS)や非リボソーム型ペプチド合成酵素(NRPS)を含む多くの二次代謝産物生合成遺伝子群を有していることが明らかとなった。本研究では、RHA1株に存在する二次代謝産物生合成遺伝子群の誘導条件を明らかにすることを目的とし、染色体上に存在するI型PKSと相同性を有する遺伝子(ro04065, ro04231)について誘導条件の探索を行った。 始めにそれぞれの遺伝子内部に赤色蛍光タンパク質(RFP)を挿入した遺伝子組換え体を構築した。得られた遺伝子組換え体を様々な条件下で液体・固体培地で1週間培養し、細胞抽出液を調整し野生株と蛍光強度を比較した。その結果、固体培地の富栄養源条件下においては、ro04065が中浸透圧および高浸透圧で転写誘導され、ro04231においては高浸透圧条件下で転写誘導が認められた。一方、貧栄養条件下においては、ro04065は中浸透圧条件下で、ro04231においては、全ての条件下において固体培地でのみ転写誘導が認められた。炭素源を変化させた場合においては、ビフェニルを用いた場合ro04065およびro04231は窒素飢餓に応答して固体培地でのみ、フタル酸、テレフタル酸においては窒素飢餓に応答して液体培地でのみ転写誘導が見られることが明らかとなった。 これまでの結果をまとめると、RHA1株に存在する二次代謝産物生合成遺伝子群のうち代表的なPKSおよびNRPSの転写誘導条件が明らかとなった。今後、これら条件によって生産される二次代謝産物の生理学的な役割を明らかにするとともに、他の放線菌群を同条件で培養することで、新規な二次代謝産物の醗酵生産系の確立をめざす。
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