研究課題
Tat2は出芽酵母の高親和性のトリプトファン輸送体であり、低親和性輸送体であるTat1とともに細胞外からのトリプトファンの取り込みを担う。ランダム変異導入法を用いて、Tat2に機能失陥を引き起こすアミノ酸置換を調べた。その結果、Tat2タンパク質の7番目の膜貫通領域に存在するフェニルアラニンがロイシンに置換すると機能を消失することがわかった。この結果は放射性標識したトリプトファンを用いた取り込み実験からも支持された。一方、Tat2-GFP融合タンパク質として発現させた場合、野生型と変異型では細胞内局在に大きな差異は見られなかった。従って、このフェニルアラニン>ロイシン置換はTat2の細胞内輸送には影響を与えず、機能のみ消失させるものと考えられる。次に、Tat2と総アミノ酸輸送体Gap1との間で膜貫通領域の入れ換えを行い、キメラ輸送体を作製した。興味深いことに作製したTat2-Gap1のキメラ輸送体の多くが細胞内に多量に蓄積し、シクロヘキシミドでタンパク質合成を抑制したあとも分解が進まないことがわかった。また、GFP融合キメラ輸送体は野生型と異なり小胞体に蓄積していた。これらの結果は、小胞体内でTat2-Gap1キメラが蓄積してクラスターを形成することで小胞体からの搬出が正常に行われないこと、また、液胞における分解も行われないことを示唆している。すなわち、膜タンパク質では膜貫通領域の適切な折りたたみが細胞内輸送やその後の分解に重要であると言える。蛍光寿命FRETを実施するためTat2-GFPとTat2-RFPを共発現させようとしたところ、細胞集団内で両者の発現量に大きなばらつきが見られた。そこで現在は、これらを同一細胞内で共発現させる系を確立する過程にある。
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