研究課題
昨年度、分子間相互作用の速度論的解析(シミュレーション)を基に、静的な結合定数K_dではなく、結合速度定数k_<ON>と遊離速度定数k_<OFF>を考慮に入れた方法を開発した。実際には、結合反応の時間の考慮、洗浄液の量や時間を従来法と大きく変えた方法である。数種類の標的を用いたモデル実験において、手間、コスト,また時間のかからない、RNAアプタマー選択法がほぼ開発でき、良い結果を得ることができた。本年度は、これを基に微生物を標的としたRNAアプタマーの創製を行った。微生物芽胞を標的に、この方法を実行し、従来法(洗浄液量数ml、洗浄時間数分のSELEX)との比較も行った。従来法に付いては、9ラウンドを行った時点で、結合能の確認を行ったところ、明らかな結合を確認できず、さらなるラウンドを重ね、13ラウンドで、ようやく結合能の確認ができた。新しい方法では、9ラウンドで芽胞に確実に結合していることが確認できた。ただし、より少ないラウンドで結合能アッセイをしていないので、結合能を得るための最小ラウンド数が9であるという意味ではない。確認の方法は、得られるRNA集団を精製し、5'末端を蛍光ラベルした。その集団を芽胞標品と混ぜ、結合反応を行った後、蛍光顕微鏡で観察する方法を用いた。対象として、0ラウンド集団、すなわち、選択をまったく行っていないランダム配列RNAそのものを蛍光ラベルし、上記と同様に芽胞標品と混ぜ、結合反応を行った後、蛍光顕微鏡で観察した。この0ラウンドRNA集団では、蛍光ラベルRNAが結合した芽胞は、まったく観察されなかった。現在、得られたRNA集団の構造解析等を行っている。
2: おおむね順調に進展している
最終年1年前に、結合能をもつRNA集団が得られ、最終年に精製することができるので、おおむね順調であると判断した。
来年度は、これらの集団をクローニングにより各RNA分子に精製し、それらの特異的結合を確認するとともにRNAの構造解析を行ら。結合能や結合部位の解析も行い、その構造より、アロステリックアプタマー等の開発を計画している。そのアプタマーにFRET (Fluorescence Resonance Energy Transfer)を組合せ、簡便に細菌を検出できる技術の開発を目指す。余裕があれば、申請者らが開発した新しいアプタマー創製法を他の複数の細菌についても試み、複数のアプタマーの開発も試みる。
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J.Physics Conf.Ser.
巻: 352(印刷中)
10.1088/1742-6596/352/1/012042
Journal of Bioscience and Bioengineering
巻: 112 ページ: 458-461
10.1016/j.jbiosc.2011.07.025
ファルマシア(日本薬学会誌)
巻: 47(招待) ページ: 101-101
http://rna.ens.tut.ac.jp