研究概要 |
本研究はインフルエンザウィルスがシアル酸に結合し、シアル酸を末端に持つシアロ糖鎖に結合することを利用して、インフルエンザウィルス感染阻害剤としてのシアロ糖鎖ポリマーを作成することを目的としている。本年度はニワトリ卵黄中に多量に存在するシアロ糖ペプチドを抽出単離し、これをアルギン酸と化学的に重合させて、シアロ糖鎖を支持体のアルギン酸に多価に付加したシアロ糖鎖ポリマーを作成し、そのインフルエンザウイルス感染阻害活性を調べた。先ず、ニワトリ卵黄よりフェノール抽出によって糖ペプチド画分を得た後、プロナーゼ処理してアスパラギン残基にシアロ複合型糖鎖が結合した糖ペプチドを分離調製した。これをDMT-MM(4(-4,6-Dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-Methylmorpholinium chloriden-Hydrate)の存在下でアルギン酸と反応し、糖ペプチドのN-末端アミノ酸残基のリジンのアミノ基とアルギン酸の構成糖であるウロン酸のカルボキシル基を縮合させたシアロ糖鎖ポリマーを得た。一方、96穴プレートのウェルにMDCK細胞を培養して細胞を単層に固定化した後、倍々希釈したシアロ糖鎖ポリマーとインフルエンザウィルスを添加してインキュベーションし、ウィルスのモノクローナル抗体を用いた免疫蛍光抗体法によりウィルスに感染した細胞を蛍光顕微鏡によってカウントしてウィルス感染阻害能を評価した。その結果、作成したシアロ糖鎖ポリマーはA型およびB型のいずれのヒトインフルエンザウィルスについても高い感染阻害活性が見られ、有用性が確認された。
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