研究課題
本研究の主要研究課題であるDDSは、リポソームの効率的作製、糖鎖によるリポソームの修飾、最後に糖鎖修飾リポソームの評価から成る。本研究では、2種類の方法での糖鎖修飾リポソームの作製を検討し、成功した。1つは合成ガングリオシドを構成成分に用いるリポソームの作製である。ガングリオシドの非還元末端に位置するシアル酸はグリセロールを部分構造として有するので、容易にアルデヒドに変換でき、その高い反応性を利用してタンパク質を結合し、さらにそこに糖鎖を付加することで糖タンパク質を模倣したリポソームの修飾を達成した。糖鎖としてシアリルルイスXを用いることで、ガンや炎症へのDDSに成功した。もう1つは、細胞膜の主要成分であるコレステロールに着目し、糖鎖修飾コレステロールを成分としてリポソームを作製する方法である。マンノースやガラクトースをリンカーを介してコレステロールに結合した後、それらを成分としてリポソームを作製した。得られたリポソームがガラクトースやマンノースを認識するレクチンが存在する標的臓器に到達することが実証され、本リポソームもDDSキャリアーとして有用であることが示された。今後は、乳ガンのマーカー分子、換言すれば血液脳幹内(BBB)を通過するための鍵分子であるシアロ糖鎖(シアリルα2-3ガラクトシルβ1-3ガラクトサミン、シアリルα2-3ガラクトシルβ1-3(シアリルα2-6)ガラクトサミンなど)を合成し、それらを2種のリポソームに結合することで、BBB通過用DDSキャリアーとしての機能を評価する。本年度の成果としてこれらの糖鎖の合成に必要な方法論を確立した。
2: おおむね順調に進展している
本技術の基盤となるリポソームの作製を達成しており、糖鎖による修飾を残すのみである
糖鎖修飾リポソームを早期に完成し、リポソームの物理化学的性質(形状、サイズ、電荷など)を測定、評価するとともに、マウスを用いたin vivoでの評価を進める。
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