研究概要 |
食品成分と内因性代謝物の多成分同時計測を可能とする高感度な組織内空間分解可視化技術を開発するためには、質量分析における選択性と検出感度を決定づける最大の要因が対象物質のイオン化効率にあることから、イオン化助剤(マトリックス)の最適化が必要不可欠となってくる。この最適化が達成できれば、質量分析(MALDI-TOF-MS)による新規食品機能性評価システムの構築が可能となる。このため、本年度は以下の項目を遂行した。 1)生体試料ベースでのマトリックス適合性・最適化の検討 代謝物標品ベースで有用性が確認された種々のマトリックス候補を用いて、食品成分を処理した組織切片上(脳、肝臓、腎臓、腫瘍など)でも効率的なイオン化が行われる最適条件(マトリックスの濃度・塗布条件・溶媒および組織適合性)を明らかにすることができた。このことは、食品成分および内因性代謝物の多成分同時計測可能になることを意味している。 2)病態モデルにおける機能性食品成分の効果検証 様々なアンチエージング・抗脳神経変性疾患作用が報告されている緑茶カテキンEGCGを経口投与(0.1%w/v,自由飲水,1ヵ月間)した若齢および老齢マウス(C57BL/6J,雄性,5および40-60週齢)の脳組織の凍結切片に最適化したマトリックスをスプレーコーティング法で塗布し、MALDI-TOF-MSにより部位・m/z特異的低分子量代謝物のイオンイメージを取得した。その結果、老化に伴って変動する代謝物や緑茶カテキンEGCGの投与によって変動する代謝物の二次元分布情報を可視化することに成功した。このような微細な生体局所応答を捉える我々が提案した高分解能代謝物解析技術は、従来法では達成できない高い信頼性・精度を保持した機能性食品成分の有効性・安全性の新たな評価法を提案するのめである。
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