研究概要 |
これまで、正常者では血圧低下ペプチドを摂取しても血圧低下が起こらないとの事実に関して,十分な科学的実証はなされていなかった。そこで、本研究では「正常者ではペプチド輸送体(PEPT1)はほとんど発現しておらず、血圧亢進に伴い発現量が増大する=生体は病態レベルに呼応して生理活性ペプチドを積極的に受け入れようとする」との仮説を実証する必要がある。 そこで、本年度は、高血圧自然発症ラット(SHR)に対する安定同位体標識ジペプチドを同時投与し、24時間までの循環血液系への吸収挙動を明らかにした。まず、標識ペプチドの特異的検出を可能とする新たなアッセイシステムの構築を図り、LC-ESI-MRM-MS/MS分析法を設定することができた。これにより、20分以内での3種ペプチドの一斉解析が可能となった。^<13>C-SIPジペプチド(^<13>C-VY、^<13>C-MY、^<13>C-LY)を合成し、18週齢SHRへの単回経口投与試験(各30mg/kg)を行った。24時間まで経時的に採血し、得られた血漿(50μL)を除タンパク処理し、Tyr([M+H]^+:m/z182.1)を測定イオン種としてMS測定(内標準物質:^<12>C-D-V-L-Y)に供した。一斉分析の結果、各SIPのC_<max>(t_<max>:0.5~1.5h)及びAUC_<0-24h>は、^<13>C-VY:3.7±1.1pmol/mL、20.8pmol/h・mL、^<13>C-MY:0.18±0.19pmol/mL、0.45pmol/h・mL、^<13>C-LY:0.84±0.19pmol/mL、2.7pmol/h・mLであり、ペプチド構造によって総吸収量は大いに異なることが判明した。
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