研究課題/領域番号 |
22658045
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
松浦 友紀子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 研究員 (60374245)
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研究分担者 |
伊吾田 宏正 酪農学園大学, 環境システム学部, 講師 (60515857)
岡本 匡代 釧路短期大学, 生活科学科, 准教授 (30331200)
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キーワード | ニホンジカ / 林産物 / 資源利用 / 衛生管理 / EU基準 / 内臓摘出方法 / 野獣肉検査資格 |
研究概要 |
日本では、野生動物であるシカ肉が管理され始めるのは枝肉になってからである。その前段階である、捕殺、内臓摘出、はく皮部分を管理する法律がない。内臓摘出と剥皮については、マニュアルやガイドラインを作成している県もあるが、どれも家畜に準じたもので、野生動物には適用しにくい部分がある。それに対してシカ肉の流通が盛んな欧州では、シカもEUの食品に関する規則の対象となり、またその規則はシカに特化したものになっている。そこで、2006年にEUの規則を取り入れた英国のシカ肉衛生管理について、日本に参考となる情報を収集した。注目すべきは、資格制度と肉の検査体制であった。英国では、流通にまわすシカ肉は、野獣肉検査資格を持った人物により、食肉として適しているかを検査され、それを証明するタグの添付が必要であった。 また、英国では、「衛生的に処理するため(かつ肉を早く冷やすため)」野外での内臓摘出が認められているが、日本では「衛生状態に不安がある」ため認められていない。そこで、野外で内臓摘出した枝肉の衛生レベルを評価することを目的とし、野外で内臓摘出した枝肉と、解体処理場で内臓摘出した枝肉の肉表面の汚染度を比較した。その結果、汚染度の指標となる一般生菌数はどちらも低い値を示した。大腸菌やその他の食中毒を引き起こす菌(サルモネラ、カンピロバクター、エルシニア)も検出されず、野外でも衛生的な内臓摘出が可能であることが明らかになった。ただし、今回の方法は英国のマニュアルを参考にし、できるだけ衛生的な処理を行った結果である。野外での内臓摘出を日本でも可能にするためには、今回示したような技術指針に従って行う必要がある。日本でも今回の技術指針をもとに、野外での内臓摘出を含めた資格制度を設け、肉の検査体制を作り上げることが、安心安全なシカ肉の流通に重要だと考えられる。
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