研究概要 |
放線菌を用いたブナ科樹木の萎凋病の生物的防除の確立を目指すため,ブナ科樹木とその周辺土壌からの放線菌の分離とそれらを用いた病原菌Raffaelea quercivoraに対する対峙培養試験を行った.6月から12月まで2ヶ月間隔でコナラ属3種(コナラ,アラカシ,ウバメガシ)の実生とそれらの根圏土壌から放線菌の分離を行い,コナラ,アラカシ,ウバメガシの各実生からそれぞれ14,36,32菌株が分離された.根圏土壌からは,コナラでは267菌株,アラカシでは404菌株,ウバメガシでは135菌株が分離された.また,6月に分離された113菌株を用いたR.quercivoraに対する対峙培養の結果,3樹種の実生由来の菌株で病原菌の生育を抑制するものはなかった.土壌由来の10菌株が本病原菌の成長を阻害し,そのうちの1菌株の阻害力は他のものより強かった.以上より,ブナ科実生および土壌から多数の放線菌が分離され,そのうち更なる接種試験に供試可能な有望菌株が獲得された. コマツナの根圏から分離された植物生長促進特性(インドール酢酸生産能,シデロファ生産能,リン酸塩可溶化能)を有する放線菌26菌株の植物生長に対する作用特性を明らかにするため,トマトを対象に地上部および地下部乾物重,開花への影響を調査した.その結果,26菌株中3菌株が地下部乾物重を有意に増加させ,10菌株が開花を顕著に早めた.以上より,放線菌の生長促進作用として,従来から示唆される植物バイオマス量の増加に加えて,開花促進という新規作用が確認された.
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